能舞台と天地人

能楽師・粟谷明生が演じる立場から能を解説する「解能新書」
その2は舞の構造を説明します。
能の舞は左回りからはじまります。
舞人は舞台に「天」・「地」・「人」を頭に描き舞います。(図1参照)


図1
本舞台の目付柱あたりを「天」、ワキ柱近くを「地」、大小前と呼ばれる小鼓座と大鼓座の間を「人」としています。
舞人は舞(お囃子に囃される舞)のはじめ(掛かり)に、まず「天」に行き、次に「地」へ移動し、「人」に戻るという左回りをして、三角形を描きます。
これは翁の舞に基づいています。
翁のシテは「天」「地」それぞれで拍子を踏み、その後、面を隠す型や左袖を巻く型をして、最後に「人」に戻り「人の拍子」を踏み舞納めます。決して「地」から「天」へと逆回りすることはありません。
仕舞も「人」よりはじまり、「天」から「地」へと左回りに移動して「人」に戻る、この一連の動きを、上羽(あげは:クセの後半以降にある、1?2句、上音で始まる、シテやワキなどの役の謡)までに行うのが基本形です。もちろん例外もあります。
中の舞、序の舞など、お囃子方に囃される舞や、クセなどの仕舞を、注意深くご覧になると、みな最初に左回りしているのがお判りになると思います。

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