寿司好き
私は寿司が大好物。子どもの頃「坊や、何が好き? カレーライスかな?」と聞かれても、決まって「お寿司!」と答え、「稲荷寿司や海苔巻じゃないよ、にぎりだよ!」とお生(なま)を言っていたから、「生意気の特上」だ。
今はぐるぐる廻る回転寿司が流行っていて、皿を取り上げれば好きなものが食べられる。気軽でいいが、私のお好みは店のご主人や職人さんの前に座る通称カウンターと呼ばれるところ。「テーブル席でいいだろう?」と言われても「いやだよ!」と平気でいっていたから、たぶん周りも困っていたに違いない。小さい時分は、必死に背を伸ばしながら、並んだねたを見回しては好きなものばかり食べて同時に注文の仕方も覚えた。「鮪、下さい!」と自分で注文しなければいけないと判ると、自然と声は大きく、はっきりと言えるようになった。
寿司屋は注文して、直ぐに食べられるのもセッカチの私には向いている。そしてご主人や板さんとの会話も楽しみの一つだ。大人になってからは、いろいろなお店を食べ歩くようになったが、「よく知らない店に入れるね! 怖くない?」といわれるが、鼻が利くせいか危ない店には入らずにすんでいる。私にとっては横文字で書かれたメニューの中からアラカルトでフランス料理を注文するほうがよっぽどコワイ。
地方の寿司屋に入れば「地元のお酒はなに? そう! 辛口ねえ、どの程度? これどこの鮪?」と臆せずしゃべれる。寿司屋が一番落ち着く。
最近、馴染みの寿司屋のご主人に薦められて「神田鶴八ちょっと小粋な鮨ばなし」を読んだ。著者の師岡幸夫さんは以前NHKの連続テレビドラマ「イキのいい奴」のモデルになった方で有名な方だ。最近引退されてしまい、私は残念ながらそのお寿司をいただいていないが、此の本は面白く読めた。特に「息子が鮨屋を継がなかった理由」という段は後継者問題について興味あることが書かれていて、自分にも置き換え考えさせられた。寿司好きの私ということで、能とは無関係だが、敢えてこの本を紹介したいと思う。
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