地謡座の位置につき、正座をして、扇を一旦右に置き、前に回し手を離します。謡わないときは袴の中に両手を隠し、同音の始まる少し前に扇をとります。扇の構え方には、真(しん)の構え、行(ぎょう)の構え、草(そう)の構えの三つの型があります。
写真をご覧ください。
真(しん)の構え
行(ぎょう)の構え
草(そう)の構え
※喜多健忘斎古能公の伝書に拠る
真の構えは御前之式(ごぜんのしき)の舞囃子のシテに限り、または一調一声などの格式の高い時に許されています。しかし実際は喜多流の扇の寸法が上掛りに比べ短く構えにくいため、真の構えは行われておりません。
素謡、仕舞、舞囃子の地謡は行の構えで、能の地謡のみ草の構えで謡います。
何故、能の時は草の構えなのか定説はありませんが、高林白牛口二師にお聞きしたところ「シテが扇を落とした場合に、即座に渡せるから」と伺ったことがあります。それならば前列だけでも金扇(きんせん)を持てば良いのにと思うのですが、現状は金扇ではなく普通の扇を持つことが習慣化されています。おそらく、演者と地謡の区別をつけるためかも知れません。
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