早装束

能装束の着換えに「早装束(はやしょうぞく)」があります。前場と後場の間にアイ語がなく、短い時間であっという間に着換え、再び登場する演出です。
喜多流では小書きとしては記しませんが、『昭君』『源氏供養』などが早装束です。
事前に揚げ幕近くに装束を整え、予めできることはすべて用意しておき、シテが中入りしたら急いで着換え、直ぐにまた舞台に出ます。
着せられるほうも、付ける方も呼吸を合わせ、無駄のない動きでテキパキと行いますが、なかなか難しいのは確かです。テキパキとは、最小限の人手で最大限の効果をだすことですが、手伝うつもりが、時には却って邪魔になるという方もいらっしゃいます。「手を出さないで!」なんて怒鳴って混乱している楽屋は皆さまには想像がつかないと思いますが、こんなことが当流にはあるのですと、暴露してしまいました。見る側からは、歌舞伎の早変わりのように、あっと驚かされ、面白みが増す演出も、演じる側からは大変神経を使う作業だとお察し下さい。

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