善光寺に纏わる能

先日の阪大喜多会戸隠での夏期合宿の帰路、長野に寄る時間がありましたので、善光寺へお参りがてら写真探訪してきました。

善光寺にゆかりのある能は、『土車』、『柏崎』、『山姥』、『道明寺』などがありますが、私が今までに勤めたことのあるものは、『柏崎』、『山姥』です。
『山姥』は善光寺へお参りにゆく百魔山姥(ひゃくまやまんば)という京の遊女が境川から上路超え(あげろごえ)の道を進むと真の山姥が現れるというお話で直接善光寺が関係してくるものではありません。
『柏崎』は、主人の死と息子の出家の知らせを受け、悲しみに打ちひしがれたシテが阿弥陀如来の慈悲を願い善光寺の如来堂を尋ねます。内陣に入ろうとすると住僧が「女人禁制」と制止するのを「仏が本当にそう仰っしゃるのか、ここは全ての人の往生極楽の門である」と逆に論破してしまう教養高い未亡人の善光寺信仰の話です。

本堂内陣の戒壇巡りは真っ暗なお堂の下を一廻りし、途中にある大きな鍵に触れると御利益があり極楽に行けるというものです。前回は不覚にも触れることが出来なかったので、今回は是非触れて御利益をの目的もありました。というわけで一応今回のお参りの成果は果たせました。

「牛に引かれて善光寺参り」で有名な善光寺は古くから宗派の別がなく、お朝事は一年を通し天台宗、浄土宗の順で行われています。寺の廻りには壁もなく、町と寺の境がないのも特徴です。
山門近くに佐藤継信、忠信の塚があります。 佐藤兄弟は源義経の家来で兄継信は八島の合戦に、弟の忠信は吉野にて義経の身代わりとして討死にしています。
能で佐藤兄弟に関連するものは、『八島』、『吉野静』、『二人静』、『摂待』などがあります。
この逆縁供養塔は兄弟の母梅唇尼が我が子の菩提を弔うため、信夫の里から山深い信濃の国まで旅をして善光寺に詣で建立したものです。