能の世界のスピード感と時間の流れ

能の世界のスピード感と時間のながれなど、このテーマで、何回かに渡りまとめてみたいと思います。

演能時間について
 現代はスピードを競う時代です。スポーツや交通機関、果ては食事まで、何分何秒を競っています。何事も時間短縮の風潮です。                                         
 これに比べ、能の世界は時の流れがゆったりしているようです。たまに少し時間がかかり過ぎるのではと思う時もありますが、現代の能は発祥当時の室町や桃山の時代に比べ、かなりスローにゆったりとした時間の流れに身を置くようにと変化してきました。以前横浜能楽堂の特別公演で室町時代に演じられていた『卒都婆小町』と現代の『卒都婆小町』を比較上演する面白い試みがありましたが、室町時代の『卒都婆小町』は45分で終演し、現代版では2時間近くかかったようです。
太閤秀吉は一日十一番、それも『関寺小町』や『姨捨』などの大曲を組み入れながら一日能三昧していた記録があります。先程の『卒都婆小町』の演能時間からも推察すると、当時は現代と違いサラサラとスピーディーに演じていたので充分可能だったのではないでしょうか。それが良いか悪いかは別として、今演能時間というものを演者が観客の立場にたって見直し、再考してもよい時期ではと思います。

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